伝統と進化が生んだデザイン、さらに肌で感じる風格と美学が「名品」の条件。モード史を彩り、私たちの日常を輝かせる名品たちの魅力をお届けする連載。カルティエ ネックレス コピー第10回目は、「カルティエ」の独創性と技術力を象徴する“パンテール”について。
フランス、パリで1847年に創業した「カルティエ」。多くの伝説とアイコンで彩られたこの王室御用達ジュエラーが特に大切にするのが、ネコ科の動物たちの美しくしなやかな姿を映し出した“パンテール”だ。その躍動の立役者となったのが、唯一無二の感性で時代を魅了した一人の女性。自身も“ラ パンテール”と呼ばれたジャンヌ・トゥーサンが夢見た、優雅かつ野性的、そしてこの上なく自由な世界へようこそ。
まず知りたい!「カルティエ」の“パンテール”が分かる3つのこと
1.「カルティエ」の“ファウナ&フローラ(動植物)の世界に君臨する、貴高き”パンテール“!
フランス語で豹(ひょう)を意味する“パンテール”。しかし希代のジュエラーは、自然界における動植物の野性と官能に魅了されていく。これまで動物作品で表現されてきたのは豹だけでなく、トラ、ユキヒョウ、ピューマなどさまざま。なかでもメゾンの世界観を具現化する存在として、“パンテール”は大切なモチーフとなってきた。
2.“パンテール”を復活させたトゥーサンの軌跡
1914年に誕生した“パンテール”の、現代まで続く人気の礎を築いたのがジャンヌ・トゥーサン。その才能でメゾンのジュエリー制作を統括するなど、1930年代当時ではとても珍しい女性の社会進出を果たしたクチュリエだ。大胆かつ有機的なデザイン、カラーストーンやゴールドづかいは「トゥーサン・テイスト」と呼ばれていく。
3.自然体の表現に、職人技の極致を見る
ハンターの猛々しい目、かと思えば踊るようにくねらせる身体、そして宝石と戯れる愛らしい四肢……。パンテールのありのままの姿をジュエリーに落とし込むには、緊張感や躍動感を表現する職人技が不可欠。世界5大ジュエラーとして名を轟かせる、「カルティエ」の面目躍如だ。
【1】王が愛したジュエラー、「カルティエ」
洗練をファミリーで受け継いで
まずはじめに、「カルティエ」の歴史は長く、濃く、華やかだ。メゾンの創業者であるルイ=フランソワ・カルティエが、自身の名を冠したジュエラーをオープンしたのはさかのぼること1847年。その6年後にパリで自らのブティックを開くと、彼の美意識と技術は、ナポレオン3世の妃、ユウジェニー皇后をはじめとした王族貴族たちを次々と魅了していく。英国王のエドワード7世は、「宝石商の王であるがゆえに、王の宝石商」という最大の賛辞で彼を称えたほど。
そして3代目を引き継いだ3兄弟の時代に、メゾンは大いなる躍進を遂げていく。王族やマハラジャたちに愛されるジュエリーの伝統は残しつつ、他のアイテムにも「カルティエ」のエッセンスを発揮! 20世紀には多くのアイコニックな時計を生み出し、メンズ向けのシガレットケースなどアクセサリー類も充実させた。そしてウォッチ制作に力を入れていた1914年、“パンテール”のモチーフが満を持して登場。ダイヤモンドにオニキスの斑点を散らし、毛並みをさりげなく(しかしゴージャスに)表現したブレスレットウォッチで、“パンテール”の物語が幕を開ける。
【2】ジャンヌ・トゥーサン、“ラ パンテール”と呼ばれた女性
どこまでも優雅で、危険で、自由な肖像
第一次世界大戦の勃発前後に、「カルティエ」ではいくつかの画期的な出来事が起こっている。ひとつは、“パンテール”の誕生。そして3代目ルイ・カルティエと、メゾンの運命を変える一人の女性との出会い。後に彼から「ラ パンテール」と呼ばれる、ジャンヌ・トゥーサンその人だ。
身に着けるのは中国のシルクブラウスに、タタール族のブーツ、大胆なファー……。異国情緒とエレガンスを融合させたジャンヌのユニークな感性に、ルイ・カルティエがたちまち魅了されたのも無理はない。彼は独創性にあふれたジャンヌを’20年代からメゾンに参加させ、1933年にはジュエリー制作の統括責任者として大抜擢。女性が働くということすら珍しかった当時、こうした重要な役職につくことなど、まさに異例中の異例。それほど、ジャンヌの才能が突出していた証拠だろう。
そんなジャンヌが夢見たデザインとは? ぜひ、1914年に発表されたパンテール ウォッチと見比べてみてほしい。彼女が描いたのは、ときに獲物を狙うように野性的で、ときに慈愛に満ちた神々しさをもつ、パンテールそのままの姿。彼女の登場前は、イスラム美術にも通じる左右対称でジオメトリックな表現が得意だった「カルティエ」に、新たな風を吹き込んだのだ。ほかにも大ぶりのカラーストーンとゴールドづかいなど、自然の美しさを称える「トゥーサン・テイスト」と呼ばれる大いなる遺産をメゾンに残していく。
【3】卓越した職人技
野性の緊張感も躍動も、お気に召すまま
ジャンヌ・トゥーサンが愛した「自然でありのまま」の姿。しかし「美しい自然体」を表現することこそ、もっとも難しいのもまた事実。パンテールのもつしなやかな身体の動き、また生命力を感じさせるボリューム感などは、世界中の目の肥えた顧客たちを満たしてきた「カルティエ」のデザインとサヴォアフェール(職人技)の成しえる技だ。
そのこだわりは、細部にまで発揮されて。まずデザインでは、綿密なリサーチが欠かせない。1927年以降デザイナーを務めていたピーター・ルマルシャンも、パリのヴァンセンヌ動物園で長い時間を過ごしパンテールの表現や動きを観察したそう! さらに技術面では、パンテールの優雅な毛並みを再現するため、オニキスの斑点のまわりに極細のプレシャスメタルの糸を張り巡らしている。ペラージュセッティングと呼ばれるこのメゾン独自の技術があればこそ、眩いまでの生命力が生まれるのだ。
【4】多彩で孤高な、唯一無二のデザイン
個性豊かな“パンテール”から、どれを選ぶ?
では、実際に今手に入る“パンテール”を見ていこう! 現在ではブレスレットやネックレスなどのジュエリーやウォッチはもちろん、パルファンやインテリアプロダクトまで幅広く展開中。“パンテール”の意匠をグラフィカルに研ぎ澄ませることで、逆にネコ科の動物のもつリアルなエレガントさを際立たせているのは面白い。単なる標本以上に、“パンテール”の本質を伝えているのだ。
さらに、“パンテール”の類まれなる魅力を香りでも感じてみては? 「カルティエ」の調香師、マチルド・ローランが2014年に手がけたオードパルファンは、ピュアなガーデニアと官能的なムスクが溶け合う「フローラルで野性的な香り」。